年4回の「メガ割」がTikTokで拡散＆認知度UP

学生： 「Qoo10」とはどのようなECサイトですか？

キムさん： 2010年に立ち上げられ、2018年に世界最大規模のEC企業であるeBay Inc.がeBay Japan合同会社を設立して経営に参画し、現在は日本国内向けとなっているECサイトです。私たちが企業や個人のセラー（売り手）から商品を買い取って販売しているのではなく、セラーが直接バイヤー（お客様）に販売するマーケットプレイスという最も効率的な方法を採用しています。2019年から年4回「メガ割」というセールを行っており、2018年には15%程度だった認知度が、現在は約80％にまで高まっています。

学生： SNSの活用など、特徴的なマーケティングについて教えてください。

キムさん： お客様に毎日「Qoo10です」と呼びかけても効率的ではないので、年4回の「メガ割」の訴求に注力しています。タレントさんを起用した動画を制作し、テレビCM、屋外広告、各種SNSなど様々なメディアで発信していますが、最近はタテ型動画を主としたTikTokの拡散力に驚いています。例えば「もうすぐメガ割を開始します」という事前広告をTikTokに投稿すると、その広告欄でお客様同士、0時からのセール開始をカウントダウンくださるイベントを作っていただいたり、「何を買いますか？」「アイシャドウです」と話し始めてくださるコミュニティが存在するのです。メガ割開始後は購入した商品について投稿してくださるなど、自然発生的にメガ割が拡散していく様子は、マーケティング担当として、そのエコシステムの発生と成長に、毎回感動しますね。Qoo10の認知度はお客様の口コミで広がっている割合が高いため、営業部門と魅力的な商品づくりを行うのと同時に、開発部門とも連携してレビューしやすい機能を整えるなど、両方向からマーケティングを行っているのも特徴です。

活躍のカギはスキルより人間性

学生： eBay JapanでECに関わる職種にはどのようなものがありますか？

キムさん： 大きく分けて営業、マーケティング、テックの3つの領域があります。まず営業は良いセラーを獲得するのが仕事。そしてプロモーションをサポートし、成長の過程を一緒につくっていくビジネスプロデュースのような役割があります。次にテックは、サーバー管理、情報セキュリティ、開発、プロダクトマネジメント(PM)の4つの領域に分かれています。
これは個人的な考えですが、PMの役割こそがeコマースのテックの特徴ではないかと思いますね。開発の基本知識やデザイン、コマースの仕組みまで理解した上で、ページの企画を行う重要な役割だからです。

モラーノさん： PMがサイト内でのお客様の動きを細かく観察し、より使いやすい動線を考えて企画してくれるからこそ私たちが担うマーケティングの効果も加速します。マーケティング部門も3つ程度に分かれており、ブランディングのように長期的に行うもの、パフォーマンスマーケティングのように短期で行うもの、あるいはQoo10内でのセールスプロモーションといった分野があります。

学生： EC業界で働く魅力や、どんな人を採用したいか教えてください。

吉田さん： 魅力は変化のスピードが速く激しい点です。私は広報として社内のマーケティング部門が作ったサービスやキャンペーンに加え、広報独自の目線で考えた意味のある情報を様々なメディアに提案しますが、毎回違うものを提案できるのです。新しい提案が多くの人に伝わるのが面白く、このスピード感がECならではだと思います。

モラーノさん： 以前、Qoo10で扱っている「アホ毛マスカラ」がTikTokでバズり、しばらく経ってから同じような商品を街のお店で見かけたことがありました。こうして自分たちがトレンドをつくっているという実感ができる時に、面白い仕事だと感じますね。この業界は求められるスキルもすごいスピードで変化するので、何か1つのスキル習得に集中するよりも、自分自身が柔軟に変化できることや、アイデアや意見を勇気を持って発言できるなど、基本的な人間らしさが大切だと思います。

キムさん： eBay Inc.はもともと「資本やオフィスがない販売者が少額の手数料や投資だけでコマースができるところをつくりたい」という創業者の考えから始まった企業なので、このDNAへの共感は大切です。それと、国籍、性別、年齢など他者の多様性を認められる人。自分のことだけでなく、常に様々なことに関心を持ち、自分から積極的に参加している人と働きたいですね。

成長を続けるEC業界で自分の可能性を伸ばそう

学生： 今後、EC業界はどのように発展していくと思いますか？

キムさん： MZ世代にとっては、物流やコマースがオンラインで行われるのは当たり前。それに加えて最近は「コンテンツを作る会社」「モノを売る会社」という壁がなくなってきており、このトレンドはこれからも続くでしょう。また、古いけれどいいものを扱う「reコマース」や、コレクション性の高いものの取引も、より話題になるのではないかと思います。

モラーノさん： Qoo10ではeコマースの“e”をエンターテイメントの“e”であると言い換えようとしています。「エンターテイメントがコマースを牽引していく」という考えのもとで、数年前から様々な計画をしてきました。近年スポーツのエンタメ化も進んでいますし、音楽や映画などに対する考え方も再定義されるのではないでしょうか。あらゆる分野でボーダレスが進む中で生き残るためには、コンテンツと商品、そしてエンターテイメントによって、どれだけお客様に愛され、選ばれるかが大切だと思いますね。

学生： EC業界を目指す学生にメッセージをお願いします。

吉田さん： Qoo10のお客様の特徴として、「このボタン、押して大丈夫かな？わからないけど押してみよう」という好奇心やチャレンジ精神のある方が多いと思います。そのため、運営する側においても新しいSNSやサービスが出てきたらとにかくやってみるというような、チャレンジできる方が活躍できると思います。

キムさん： 学生時代にセラー（売り手）の経験があれば、コマースの流れがわかるので大きな強みになるでしょう。もし当社に興味を持ってくださったなら、「自分で事業をやる」という気持ちで入社していただきたいです。就職するというより、自分で新しい事業をつくってみようという心構えを大切にしてほしいですね。

モラーノさん： これから、成功も失敗も含めて買い物の経験をたくさんしてください。例えばネットで何かを買うとき、安さ、早さ、特典など優先するものがあるはず。「なぜここでこれを買うか」という実体験が、この業界では大切です。そして、成長している業界へのチャレンジは自分の伸びしろを広げることにつながるので、そういう意味でEC業界を目指すのは素晴らしい選択だと思います。伸びていく業界でぜひ自分の可能性を見出し、伸ばし、磨いてください。